家族が出払った家の中、
カーテン越しに冬の柔らかい
陽射しを感じながら、
キッチンで煮込み料理を
仕込んでいたときのこと。
トントンと包丁がまな板に当たる音、
火にかけた鍋がコトコトと吹き出す音。
そして目の前は、
少しだけ雑然としたリビング。
なのに、とても神聖な儀式を
執り行っている気持ちになったのです。
BGMがサンスクリット語の
般若心経だったからでしょうか?
真相のほどはわかりませんが、
おだやかな調に合わせて聞こえてくる
お経は、意味はわからなくても
人のこころを平安に導いてくれることに
あらためて驚きました。
そして、いつなんどきも
こんな気持ちで暮らせたら、
どんなにか安らかでいられるだろうかと
思いました。
そんな境地はまだまだ遠く向こう。
でも、蜃気楼を一瞬だけ捕まえたような
ひとときでした。
祈るように暮らせたら……。
私の願いがまたひとつ増えました。